手付金と内金

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手付金と内金


手付金とは

【民法第557条】

  1. 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
  2. 第545条第3項の規定は、前項の場合には、適用しない。

手付金とは、原則として、売買の場合において、買主はその手付金を放棄して契約を解除でき、売主は手付金の倍額を買主に返して契約を解除できるというものです。(但し、相手が履行に着手した後は解除できません。)
たとえば、お店に立ち寄ったら、自分が以前から探していたレア商品が1つだけ入荷している。値段は5万円。しかし、買うつもりで来店したのではないので、手持ちは1万円しかない。そこで「手付金を払うから、他に売らないでくれ」といったような場合、買主は5万円を用意してくれば商品を手に入れられますし、やっぱりやめようと思えば、手付金を放棄して契約解除ができます。売主の方は、買主が帰ったあと、別のお客がやってきて、「7万円で買う」といった場合、手付けを払ったお客に2万円払って契約を解除して、後のお客に売ることもできるということになります。このような場合の手付金の性質は解除権留保付の手付金解約手付)と呼ばれます。

不動産の売買では、代金の10%ぐらいの額の金銭を契約書調印と同時に授受しています。契約書調印の時点では、まだ代金すべてを払うというようなことはあまりなく、後に「決済日」が設定され、その日に代金総額と権利証・印鑑証明書等との授受を行い、その日のうちに登記申請もするというのが通常です。この契約書調印の時点で授受される金銭も、「手付金」と呼ばれていますが、不動産売買の場合、価額の10%といえば大金です。買主も売主も、そう易々と手付解除をするとは思えません。

不動産売買の契約書には、

売主または買主に本契約上の不履行があった場合には、その相手方に対し、契約を解除して損害賠償を請求することができる。この場合、売主が解除したときは買主より収受した手付金を没収し、買主が解除したときは、売主に対して手付金の返還と、これと同額の損害賠償を請求できる。

などと書かれていますが、これは「賠償額の予定としての手付金」ということになります。
また、手付金には「証約手付」という性質もあります。証約手付とは、「契約が成立したことを証明する」という意味です。すべての手付金にはこの性質があると考えられています。

内金とは

「内金」とは、代金の一部の支払いをいいます。内金は手付金とは違いますので、内金を放棄しても契約解除はできません。解約手付金を払っていても、相手方が履行に着手した後は解除する権利は消えてしまい、契約どおりに履行することになります。この場合、手付金は代金の内金に充当されることになります。民法に規定には、手付金は内金になるとは規定されていませんので、契約条項に、「手付金は、内金として充当する。」と記載しておくと良いでしょう。




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