建物がキレイかどうかは旅館業許可の要件ではない話

どうも!
沖縄市の行政書士、酒井です。

先日、保健所に飲食店営業許可の申請書を提出しに行ったのですが、私の隣のカウンターで旅館業の許可について聞いている方がいました。飲食許可の申請手続き中に、隣の話が耳に入ってきたのですが、こんな話をしていました。

相談者「キレイにリフォームしました。簡易宿所の許可取れますか?」
保健所の職員さん「キレイかどうかは問題じゃないですよ。」
相談者「え?クロスも床も張り替えたんですけど・・・」
保健所の職員さん「消防設備は整っていますか?管轄の消防本部で消防法令適合通知をもらってください。床面積は・・・60㎡くらいですね。用途変更は要らないですが、検査済証はありますか?それらを添付して申請してください。」

私が何を言いたいのか?ですが、質問している方の「キレイにリフォームしました!」です。これ、うちの事務所にご相談に来られる方もよくそう仰られます。

もちろん、お客を宿泊させる建物なので、キレイなほうがいいに決まっていますが、見た目の問題より先にクリアすべき要件がたくさんあります。
用途地域、用途変更の建築確認、消防設備・・・
それらの問題がクリアになっていれば、見た目がボロでも許可は取れます。逆に言えば、見た目が立派でもこれらの問題がクリアになっていなければ許可は受けられません。

お金をかけてリフォームしたのに、用途地域が住居専用地域だった・・・とか、リフォームに資金をつぎ込んだら、消防設備設置の費用が足りなくなった・・・とか、用途変更の建築確認申請をしてくれる建築士を探しても誰も依頼を受けてくれない・・・とか。こんなことになったら、旅館業許可は無理です。もうしばらく待って、住宅宿泊事業法に期待してくださいとしか言えません。

旅館業許可を受けるには少なくないお金がかかることが多いです。許可が受けられる見込みを調査して、総額どのくらいかかるのかをしっかり見極めてからリフォームに着手するようにしてくださいね。

ついでにもう一つ。
不動産情報などで、「民泊OK!」という賃貸物件。
不動産情報サイトなどをみると、最近は「民泊にどうですか?」などとコメントがつけられ紹介されている建物を見ます。
これも事前に調査せず安易に契約してしまうのは危険です。上記のように紹介されている物件すべてがそうではないですが、なかにはどうやっても旅館業許可を受けられない建物があったりします。不動産業者さんはウソを言っているのか?というとそういうわけではないです。
民泊OK!というのは、「オーナーさんが民泊に使ってもいいよ」と言っているということだったりします。(オーナーさんがダメと言ってる物件は、許可要件を満たせそうでも民泊には使えません)オーナーはOK、で、許可は借主さんの責任でお願いしますということです。
すぐに民泊営業ができる物件を紹介しているとは限りませんのでご注意ください。

当事務所は許可が受けられるかどうかの調査も承っていますのでご相談ください。

ではまた

住宅宿泊事業法の案の話

どうも!
沖縄の行政書士、酒井です。

いよいよというか、やっとというか、民泊新法の案がネット上に出回っています。法律の名前は「住宅宿泊事業法」なんだそうです。相変わらず「民泊」は俗称のままですね。
3月くらいに国会に提出されるようですが、施行まではまだ少し時間がかかりますね。法律だけじゃなく、政令、省令、条例も準備が整わないと施行できませんので、しばらくはかかると思います。

案の全文をここに貼り付けて紹介してもしんどいだけなのでしませんが、気になる点だけピックアップしておこうと、ざっと案を読んでみました。

気になっていた点1
まず、営業可能な日数ですが、やはり1年間で180日以下になるようです。1年の半分ですが、半年お休みで利益が出るかどうかですね。通年で営業したいならやはり旅館業許可を取る必要があります。

気になっていた点2
旅館業許可申請では非常に厳しい用途地域の制限ですが、住宅宿泊事業法の中で、用途地域による営業は禁止なんて規定はありません。が、法案の18条に「条例による住宅宿泊事業の実施の制限」という規定があり、都道府県ごとに条例で制限を設けることができるようになっています。
常識的に考えて、第一種低層住居専用地域など、いわゆる高級住宅街での制限が設けられるのは当然でしょう。
旅館業でもそうですが、県が条例で法律に上乗せする形で民泊を制限している事例がありますが、住宅宿泊事業法でもこれはありうる話です。
「〇〇県では、面倒だから民泊一律禁止」などといった制限ができるかといったらそうではありません。
18条には、「住宅宿泊事業法に起因する騒音の発生、その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要であると認められる区域があるときは、条例で観光客の宿泊に対する需要への的確な対応に支障を生ずるおそれがないものとして、政令で定める基準の範囲内において、期間を定めて当該区域における住宅宿泊事業の実施を制限することができる」となっています。
政令の内容はまだ私は見ていないです。

気になっていた点3
消防設備、用途変更等ですが、これらも、政令、省令、条例等に委任するかたちですので、詳細は不明です。
旅館業よりは緩いのかな?同等の基準を求められたらあまり使えないと思います。

また「住宅宿泊管理業」(民泊運営事業者)や「住宅宿泊仲介業」(Airbnbなど)についても規定されています。
登録する際の登録免許税が9万円と結構高いなぁ~という印象です。

とりあえずはさわりだけですが、ご紹介してみました。
政令、省令、条例等が出そろってきたら、詳細を書きたいと思います。

ではまた。

定款への電子署名

こんにちは。
沖縄市の行政書士、酒井です。

当事務所は、会社の定款を電子定款で作成しています。
今となっては電子定款は当たり前になっていますが、私が補助者として士業の仕事に就いたときはまだ紙の定款しかありませんでした。

司法書士事務所の補助者で沖縄に来る直前に、2、3か月くらいオンラインでの登記申請をしているのを見ましたが、当時は申請システムも現行のものとは違いトラブルが多く、明日はオンラインで登記申請をやってみよう、ドキドキ・・と、肩に力が入るものでした。

それがいまや便利になったものです・・・って電子定款って便利ですかね?収入印紙4万円分を貼らなくていいくらいのメリットしかないような気がします。

そんな話はさておき、今現在、株式会社の設立のご依頼をいただいて、定款認証の嘱託手続きを進めているところなのですが、問題発生!!

私は定款への電子署名は住民基本台帳カードの納められた公的個人認証を使っていましたが、今年の3月でその電子証明書の有効期限が切れるので、マイナンバーカードに数日前に切り替えたところ・・・

電子署名ができない!!!

私のパソコンはwindows10で、アドビのアクロバットはバージョン9。
登記供託なんとかねっとで無料で配布されるプラグインSinged PDFで署名していました。カードリーダーライターもシャープの7年前に買ったもので、パソコン以外は随分と古いものを使っていましたが、住民基本台帳カードでは何の問題もなく電子署名し、登記供託オンラインシステム上での署名もできていました。

が、カードがマイナンバーカードに変わったとたん、エラーが出てうまくできなくなりました。まあ、そりゃ再インストールとかは必要だろうなと、説明を読みながら対応するソフトやプラグインを入れ直し、よし!大丈夫だろう!と再度チャレンジ。

がしかし、ローカルでPDFに署名しようとしてもうまくいかない。

ちゃんとアクロバットの古いバージョンに対応したSinged PDFも配布されているし、間違えてインストールしてないかは確認した・・・最新のSinged PDFはそもそも、アクロバットバージョン9には入らない。
カードリーダーライタがダメなのかな?とシャープのウェブサイトを見ると、
「Windows10では使えません!」
と書いてある。ドライバーもwindows8までしかない。ええ!でも、昨日まで住基カードならWindows10で動いたんだけどなぁ~と思い、ほかのところの設定を変えたり、長い時間かかってあれこれ試すも、署名の最後のところで「接続を確認」とか出る・・・

住基カードは使えたけれど、マイナンバーカードはうちのカードリーダーライターでは使えないんだという結論に達し、仕方なく、マイナンバーカードに対応と書かれた新しいカードリーダーライターを購入、接続して設定しなおし再チャレンジ!

同じ・・・なんでだ?

ネットで調べてもあまり情報はなく、政府のウェブも全然親切ではないし、ネット上をウロウロすること数時間、ある士業の方のブログに同じ現象が書かれていて、解決策は「アドビ アクロバットを最新のDCに変える」とあった。
ええ!そこ?一番お金がかかるところじゃないか!

アドビアクロバットDCは安いほうのスタンダードでも3万円超のソフト、まあ仕事だから買いますけど、政府は電子署名する環境を整えるのに数万円かかることについてどう思っているんだろう・・・
士業でない方が、「よし!株式会社設立を自力でやろう!」と思い立っても、ここでやる気が失せるはず。

その後もアクロバット9でできないかといろいろ調べると、アクロバットリーダーDC(無料のPDFヴューア)の署名でもできるようだ、ただ、アクロバットリーダーDCでICカード式のマイナンバーカードは使えませんけどね・・・残念。
アクロバットリーダーDCで、セコムトラストシステムとかのファイル式の電子証明書であれば署名できるようです。

一応行政書士は、セコムのほうが推奨なんですけど、アクロバットリーダーDCでマイナンバーカードを使った署名ができるようにしてほしいものです。

全然面白くない話ですが、同業者で住基カードを使っている方、マイナンバーカードに変えると、環境によっては署名できません。
「明日、公証役場だから、今日送っとこう」なんてタイミングで署名できないと焦りますよ。お気を付けください。

ではまた。

また、セコムの証明書を契約しようかなぁ・・・

遺言書はやっぱり公正証書遺言の話

どうも!
沖縄の行政書士、酒井です。

今回は遺言書の話です。

ベタな話ですが、遺言書を作成するなら、絶対に公正証書がオススメです。
遺言書は、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3つが主に用いられます。

自筆証書遺言は、費用があまりかからず、自宅で作成できるは魅力ですが、紛失、偽造、変造の恐れがあり、また記載方法に不備があると無効になる可能性もあります。このブログでも以前、ニュースをご紹介しましたが、押印の代わりに、「花押」を施してあった遺言書が「無効」という最高裁の判断がありました。なによりも、手で書かなければならないというのも鬱陶しいです。(ワープロ、代筆は不可です。)

毎年必ず1回は遺言書を見直して書き換えるというような方(そんな人いますかね・・・)なら、慣れているし、毎回公証人の手数料等を払っている場合ではないので、自筆証書遺言でもいいと思いますが、確実に遺言内容を実現したいと考えると、ちょっと不安な遺言書です。

秘密証書遺言は、自筆で書いたものでも、代筆でも、ワープロでもいいですが、作成した遺言書をもって公証役場にいき、証人の立会いのもと、封をして遺言書を公証役場で保管してもらう遺言です。
紛失、変造のおそれはなくなりますが、内容については公証人は関与しないので、内容がそもそも無効だったりしたら、ただの紙を公証役場で大事に保管しているということになってしまいます。

そこで、公正証書遺言です。これは、遺言者が公証役場に赴き(公証人が出張もしてくれますが、料金は1.5倍くらいになります)、遺言内容を公証人に伝え、公証人が遺言書を作成してくれます。こちらも秘密証書と同じく証人の立会いが必要です。
(誤解のない様に書きますが、いきなり公証人役場にいけばその場ですぐできるわけではありません。)
なので、遺言内容も公証人が確認しますし、公証役場に保管されるので一番確実な方法です。
また、自筆証書、秘密証書は裁判所で検認手続が必要ですが、公正証書遺言はこれが不要です。

遺言は相続人間の争いを減らすのに効果があると思いますが、無効だ、偽造だ!と争いになるような中途半端な遺言は、逆に残さないほうがいいかもしれません。

遺言書を作成しようとお考えの方は、公正証書で作成してください。

ここからは余談ですが、遺言書には上記の3つ以外の方法もあります。あまり使われることはないのですが、一応書いておきます。

上記の自筆証書、秘密証書、公正証書遺言は「普通方式」といわれます。
これに対し、「特別方式」の遺言もあります。

特別方式の遺言とは、危急時遺言(一般危急時遺言船舶遭難者遺言)と隔絶地遺言(伝染病隔離者遺言在船者遺言)の4つがあります。

一般危急時遺言は、疾病その他の事由で死亡の危急が迫っている人がする遺言です。立会い証人は3名以上。

船舶遭難者遺言は、船舶の遭難により、死亡の危急が迫っている人がする遺言です。疑問なのは、証人も同じ船に乗ってるのか、船が遭難してどこかに流れ着いた後なのか、果たしてどういう状況なんだろう?といつも思ってしまいます。立会い証人は2名以上

伝染病隔離者遺言は、伝染病のため行政処分により隔離されている人がする遺言です。立会い証人に警察官が入っています。警察官と、1名以上の立会い証人が必要。

在船者遺言は、船に乗っている人がする遺言です。船舶遭難者遺言と似ていますが、こちらは死亡の危急が迫っているわけではないのが違いです。

上記4つの状況のときに、これらを思い出したとしてもなかなか難しい遺言だと思います。

ちなみに私は、一般危急時遺言の立会い証人になったことがあります。
病院での遺言でしたが、遺言者は意識ははっきりしていましたが、意思能力とは関係のない疾患で医師に危険な状況にあるといわれている方でした。
残念ながら、この遺言者の方は、遺言の数日後に亡くなられて、遺言の効力が生じましたが、危急時遺言を作成した後、病状等が回復して元気になった場合は、「危急時遺言をした後、遺言者が普通方式で遺言ができるようになった時から6ヶ月間生存した場合には効力を失う(民法983条)」となっています。

特別方式はとても不安定な状況での遺言ですのでオススメはできません。しつこいですが、やっぱり普通方式の公正証書遺言がいいですね。

では、また。

民泊の新法制定?

どうも!
沖縄の行政書士、酒井です。

前回は民泊(簡易宿所)の許可はハードルが高い!と、これから民泊を始めようという方には面白くもなんともない記事を書きましたが、今日は新しい政府の動きをご紹介します。(もう半年以上前の話ですけどね・・・)

厚生労働省と観光庁でつくる専門家会議が昨年6月、一般の民家に観光客を有料で泊める「民泊」を本格的に解禁するため、新法の制定を求める報告書をまとめました。まだ法律は施行されていませんが、内容はこの報告書である程度までは予想できそうです。

厚生労働省の報告書の全文はこちらで見てください
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin.html?tid=312986

以下、気になるところを抜粋していきます。枠で囲まれているところは、「報告書」からの引用です。

制度の対象とする民泊の意義

住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。「一定の要件」を超えて実施されるものは、新たな制度枠組みの対象外であり、旅館業法に基づく営業許可が必要である。

現在の旅館業法とは別に新しく法律が制定されるということのようです。「一定の要件」というのがどういうものかが気になりますが、旅館業許可よりは要件が緩くないと使いようがないです。

「家主居住型」と「家主不在型」

「家主居住型」と「家主不在型」に区別した上で、住宅提供者管理者仲介事業者に対する適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保しつつ、行政が、住宅を提供して実施する民泊を把握できる仕組みを構築する。

新しく制定される民泊新法(←私が勝手に言ってる言葉です)では、家主居住型と家主不在型の2タイプが考えられているようです。下線のところですが、把握できる仕組みって何でしょう?現在、違法民泊を取り締まれていないことを今後はどうにかしようという意味だと思います。

家主居住型(ホームステイ)に対する規制
  • 「家主居住型(ホームステイ)」とは、住宅提供者が、住宅内に居住しながら(原則として住民票があること)、当該住宅の一部を利用者に利用させるものをいう(この場合、住宅内に居住する住宅提供者による管理が可能)。
  • 住宅提供者は、住宅を提供して民泊を実施するに当たり行政庁への届出を行うこととする(家主不在型も同様)。
  • 住宅提供者には、利用者名簿の作成・備付け(外国人利用者の場合は、旅券の写しの保存等を含む。)、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅の見やすい場所への標識掲示、苦情への対応、当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認等を求め、安全面・衛生面を確保し、匿名性を排除する。また、無登録の仲介事業者の利用の禁止を求めるべきである(家主不在型も同様)。
  • また、法令違反が疑われる場合や感染症の発生時等、必要と認められる場合の行政庁による報告徴収・立入検査、違法な民泊(「一定の要件」に違反した民泊や、家主居住型と偽って家主不在型の民泊を提供するもの等)を提供した場合の業務の停止命令等の処分、無届で民泊を実施したり、上記の義務に違反するなどの法令違反に対する罰則等を設けることを検討すべきである(家主不在型も同様)。
  • 住宅提供者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。※ 住宅提供者が仲介事業者を利用せず、自ら利用者を募集する場合についても、本報告書の制度設計のあり方に沿って取り扱うべきである。
  • 宿泊拒否制限規定は設けない。
家主不在型に対する規制について(管理者規制)
  • 「家主不在型」の民泊(出張やバカンスによる住宅提供者の不在期間中の住宅の貸出しは家主不在型と位置付け)については、家主居住型に比べ、騒音、ゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申入れ先も不明確である。
  • そこで、「家主不在型」の民泊については、住宅提供者が管理者に管理を委託することを必要とし、適正な管理や安全面・衛生面を確保する。
  • 管理者は行政庁への登録を行うこととする(住宅提供者自らが管理者としての登録を受ければ、自宅で、家主不在型の民泊を提供することも可能)。
  • 管理者による住宅提供者の届出手続の代行を可能とすることを検討すべきである。
  • 管理者は、住宅提供者からの委託を受けて、利用者名簿の作成・備付け(外国人利用者の場合は旅券の写しの保存等を含む。)、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅の見やすい場所への標識掲示(国内連絡先を含む。)、苦情への対応、当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認等を行う。
  • また、法令違反が疑われる場合や感染症の発生時等、必要と認められる場合の行政庁による報告徴収・立入検査、上記業務を怠った場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等を設けるべきである。
  • 管理者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。

家主が住んでいる物件に宿泊させるものと、家主がいない物件に宿泊させるものがあるとなっていますが、家主不在型の方がが多いでしょうね。
注目すべきは、許可申請ではなく「届出」でいいということです。
許可と届出はどう違うか?
簡単に言えば、「許可」は申請して行政側の審査、判断があり許可されてはじめて営業できるのに対し、「届出」は行政に対して民泊やります!とお知らせして終わり、みたいなイメージです。(簡単にいい過ぎかもしれません・・・)といっても、警察(公安委員会)に対してする許可申請と、届出でそう大差ない手続のものもありますし、人を宿泊させるという業態である以上、大げさではなく命に関わることもあるので、営業開始しますよ!とお知らせして終わりということはないような気がします。また、管理者を置くことができる旨も規定されるようです。

仲介事業者規制について
  • 民泊(家主居住・不在型いずれも含む。)に係る仲介事業者は行政庁への登録を行うこととし、仲介事業者には消費者の取引の安全を図るため、取引条件の説明義務や新たな枠組みに基づく民泊であることをサイト上に表示する義務等を課すべきである。
  • また、行政庁による報告徴収・立入検査、違法な民泊(無届の家主居住型民泊、登録管理者不在の家主不在型民泊、「一定の要件」に違反した民泊等)のサイトからの削除命令、違法な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等を設けるべきである。
  • 仲介事業者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。
  • 外国法人に対する取締りの実効性確保のため、法令違反行為を行った者の名称や違反行為の内容等を公表できるようにすることを検討すべきである。

仲介業者というのは、Airbnb‎のようなもののことです。現在、無許可民泊が登録されていることが問題になっていますが、許可申請または届出をしていない事業者は登録できなくなります。他の業界でも、許可証を見せないと雑誌やウェブに掲載してもらえなかったりするのは普通にありますので、民泊もそうなるのは当然でしょう。

一定の要件について
  • 上記の「一定の要件」としては、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要である。
  • そのような「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、「住宅」として扱い得るようなものとすることを考慮すると、制度の活用が図られるよう実効性の確保にも配慮しつつ、年間提供日数上限による制限を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する。なお、その際、諸外国の例も参考としつつ、既存のホテル・旅館との競争条件にも留意する。
  • 「住宅」として扱い得るような「一定の要件」が設定されることを前提に、住居専用地域でも実施可能とすべきである(ただし、地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能)。
  • 「一定の要件」が遵守されているかのチェックのため、住宅提供者又は管理者に報告などを求めるべきである。

報告書には「一定の要件」について、あまり具体的には書かれていませんが、明らかになっているのは、年間提供日数上限(180日以下)と住居専用地域での営業を認めるということです。180日しか営業できないので、通年で営業したいなら相変わらず旅館業許可を受けるしかないです。
住居専用地域での営業ができる点は、条件が付く可能性はありますが、民泊にできる物件が相当増えると思います。

その他
  • 旅館業法に基づく営業許可を受けずに営業を行っている者(以下「無許可営業者」という。)その他旅館業法に違反した者に対する罰則については、罰金額を引き上げる等実効性のあるものに見直すべきである。
  • また、無許可営業者に対する報告徴収や立入調査権限を整備することについても併せて検討すべきである。
  • 旅館業法の許可に当たり、賃貸借契約、管理規約(共同住宅の場合)に反していないことを担保できるような措置について、検討すべきである。

現在の旅館業法の罰則はあまり重くないので、今後見直される可能性が示唆されています。旅館業法の内容自体も改正され、立ち入り権限等が強化されるようです。

旅館業法が作られた当時は、民泊のようなものは想定されていなかったため、民泊と旅館業法はマッチせず、許可を受けるのが非常に難しくなっていますが、新法が成立すればもっと簡単に民泊を始められるようになるかもしれません。まだ法律ができていないので、消防法や建築基準法のことはどうなるのか?という不安はありますが、これは緩和されると考えていいと思います。

法律が制定されたら、またご紹介したいと思います。
ではまた

民泊を始めるときにぶつかる3つの壁

どうも!
沖縄の行政書士、酒井です。

民泊熱は一向に収まる気配がないです。
ですが、旅館業(簡易宿所)許可はなかなかに厳しい要件があって、簡単に営業スタートとはいかないものです。

当事務所も、お問い合わせやご相談はたくさん頂くのですが、要件を説明すると、ご相談者はムムムっ!となってしまいます。

テレビなどの報道等で民泊についてよく取り上げられていますが、見ていると簡単にできそうで、しかも儲かる!という印象を受けます。ですが、そんなに甘くはないんですね・・・無許可営業で摘発された報道もちらほら見ます・・・

旅館業法はすこし緩和されてきましたが、それ以前の都市計画法、建築基準法、消防法はそんなに緩んでないんです。タイトルの3つの壁とはまさにこの3つの法律です。消防法なんて昨年か一昨年くらいに緩むどころか厳しくなっています。

1つ目は、用途地域(都市計画法)。「第○種○○住居専用地域」というような、住居専用という文字が入っている用途地域では旅館業は営業できません。宿所にしようとする物件がどの用途地域にあるのかは、市役所の都市計画課等で確認できます。(その他、工業地域なども営業不可です。)

2つ目は、建物の検査済証を旅館業許可申請に添付(建築基準法)。建物を建てる場合、まずは、建築確認申請を行います。建築しようとする建物の設計図面を添付して法令に適合しているか(違反していないか)確認する手続です。この建築確認の後に建物を建てるわけですが、出来上がったら検査を受けます。検査済証があるということは、法令に違反なくその建物は出来上がったということになります。(建築確認とぜんぜん違う建物が完成していたら、検査済証はでません。)
旅館業許可の審査は保健所が行うわけですが、保健所は建築の専門部署ではありませんので、この検査済証が添付されていれば自動的に建物が建築関係の法令上はOKと判断するということです。
検査済証はある!よかったぁ~と安心するのはまだ早いです。
建築確認には、建物の用途が記載されています。もちろん戸建の住宅は用途が一戸建ての住宅となっていますし、アパートなら用途が共同住宅になっています。もちろん用途の中にはホテル又は旅館というものもあります。
ホテル、旅館として使用する目的で建築された建物は当然、建築確認に記載される用途はホテル又は旅館になっているでしょうが、いま多く人が民泊として旅館業の許可を受けたい物件は、一戸建ての住宅や共同住宅が多いです。一戸建ての住宅の用途で受けた検査済証を添付すればいいのか?という疑問が湧いてくると思います。
ホテル又は旅館以外の用途であっても、旅館業の用途に供する床面積が100㎡を超えない場合は、そのまま用途を変えないで検査済証を添付すればいいことになっています。ただし、用途変更が必要でなくても、旅館業に使用する建物に求められる基準を満たす必要はあります。
では、床面積が100㎡を超えていたらどうなるか?
用途変更の建築確認申請を行い検査を受ける必要があります。この用途変更の建築確認は、建築士に依頼する必要があります。この費用はケースバイケースですが結構かかるようです。

余談ですが、建築確認に記載されている用途と、登記事項の建物の種類は別です。用途とは登記事項の建物の種類ではないのでご注意ください。

3つめ、消防法です。これもかなりの厚い壁です。
旅館業許可には消防法令適合通知書を添付しなければなりません。これも検査済証と同じで、保健所はこの適合通知書が添付されていれば消防法令上の問題はないと判断します。
一戸建ての住宅に求められている消防法令の要件と、ホテル又は旅館に求められている要件は、当然のことながらホテル又は旅館のほうが厳しいです。なので、もともとが住宅である建物を旅館業の用に供するには、消防設備を備える工事が必要です。これも安くはありません。当事務所にご相談に来たお客様が業者から見積もりを取ったこと何度かありますが、普通の一戸建てに消防設備を設置する工事の見積もりが、100万円に迫るものだったりします。条件にもよるのでしょうが、設備の工事費用は高い場合が多いです。

100㎡を超える住宅を宿泊施設に転用するには、例外はありますが100万円単位でお金がかかると思ってください。テレビで「あなたもすぐに始められます!」みたいなことを言っているのは、いかがなものか?と私は思っています。

ですが、高くないといえばそうとも思います。
そもそも、ホテルや旅館を一から建てて営業すること考えれば、100万円や200万円ではすまない話ですからね。

民泊をこれから始めようとお考えの方は、結構な金額を投資して営業を始め、はたして本当に利益が出るのかどうか、しっかり事業計画をたててから着手することをお勧めします。

今回はつまんない話でしたが、次回は民泊に関するあたらしい動きについて書きます。

ではまた。

会社設立の話⑤「定款の相対的・任意的記載事項2」

どうも!
沖縄の行政書士、酒井です。

前回の続きで、「相対的記載事項」と「任意的記載事項」についてです。
以下、よく記載される相対的記載事項をもう一度載せておきます。

  1. 変態設立事項
  2. 株式の譲渡制限に関する定め
  3. 株券発行の定め
  4. 基準日
  5. 株主総会,取締役会及び監査役会招集通知期間短縮
  6. 取締役会,会計参与,監査役,監査役会,会計監査人及び委員会の設置
  7. 取締役等の任期の伸長
  8. 公告の方法
  9. 事業年度
  10. 株主総会の議長
  11. 議決権の代理行使
  12. 取締役、監査役の員数
  13. 代表取締役、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役等)
  14. 取締役会の招集権者
    など

前回は、役員の任期の伸張は外せないぞ!ということでしたが、これをするには、発行する全株式に株式譲渡制限の定めしておかないとだめということです。役員任期の伸張と、株式譲渡制限はセットですのでご注意。

で、今回ですが、もう後は決まり文句を書くようなものですのでささっと終わります。(と思っていても結構長くなったりしますが・・・

3の株式発行の定め。これは要りません。株式会社なら株を発行するのが当たり前だろ?と思うかもしれませんが、これは「株券」です。旧法時代は株券を物理的に発行するのが原則で、例外として株券不発行の定めを置いていましたが、今は逆になっています。株券(紙に印刷して株の権利を証票するもの)が発行されると、株主は株券の管理をしなければならず、盗難や紛失の恐れもあります。なので、会社法では、あえて株券を発行したい場合は株券発行の定めを定款に置くことになっています。もう一度いいますが、これは不要です。

4の基準日。基準日とする日に株主名簿に記載・記録されている株主を定め権利者とする日のことです。 基準日から3ヶ月以内に行使することができる権利の内容を定めなければならない日とされていますが、事業年度の最後の日と同じでいいと思います。

7の公告の方法ですが、旧法時代は絶対的記載事項でしたが、現在は定款に定めなければ、自動的に官報が公告方法になります。その他時事に関する日刊新聞とかウェブとかありますが、新聞は官報より公告する費用が高額らしいですし、ウェブはネットトラブルがあると公告が有効に行えない場合もあり、それをフォローする手続もありややこしそうです。コンピュータが得意な方は、一番安上がりなのかもしれませんが、あまりおすすめしていません。官報がいちばん無難だと思います。

9の事業年度は、ご自身の都合のいい期間を定めてください。個人事業主と同じ1月1日から12月31日まででもいいですし、行政の年度と同じ4月1日から翌年3月31日まででもいいです。6月1日から翌年5月31日とかでももちろんいいです。ただ注意すべきは、現在平成29年1月28日に会社設立したとして、4月1日~翌年3月31日の事業年度を設定してしまうと、2ヶ月ちょっとで1期目が終わりになってしまいますよね?これは会社スタート早々鬱陶しい話になるのでご注意ください。

10の株主名簿の議長は、代表取締役でいいでしょう。他にも選定方法を定めておいたりすることもできますが、当事務所では、代表取締役とするとしいています。

11の議決権の代理行使は、定めるとすれば、「株主に限る」などと設定しておけばいいです。譲渡制限と同じような趣旨ですが、知らない人が株主総会に来ることを防げます。

12の取締役の員数は定めなくてもいいです。取締役を5人以上にはしたくないなら、「取締役を5名まで置く」とすればいいですし、最低でも3人は置いておこうと思うのなら、「取締役を3名以上置く」とか定めます。ただ、5名までなら1名でも、2名でもいいですが、3名以上置くとすると、1名、2名は定款規定に違反になりますので、あわてて3人の取締役をそろえなければならないということです。

13の役付取締役は、会長、社長、副社長、専務、常務などの役を定款で定めておくことですが、この会長、社長、副社長、専務、常務というのは、会社法上の定義はありません。普通これらの役付の方は取締役ですが、平社員を常務と呼ぶのも自由です。(ただ、取締役でもないのに専務だ常務だと名乗らせて相手に誤解を与えてしまったときに会社は責任がないとは言えませんのでそういうことはしないほうがいいです。)役は定款外で定めてもいいので、定款にあえて書く必要はありませんが、当事務所で作成する定款では、「代表取締役は社長とする」くらいは記載しています。

飛ばしたものもありますが、これらを組み合わせて定款の体裁をとり、発起人が実印で押印していけば定款は完成です。

このブログを読んでも、自力で定款を作成したい人が定款を完成させることはできそうにもありませんが、法務局のホームページか、公証人連合会のホームページを見れば、定款のサンプルがありますので、それを手元置いて、当ブログのポイントを読んで完成させればいけるんじゃないかな?と思います。あくまで一般的な非公開会社の発起設立に限りますが・・・

よく分からん!という方は、当事務所にご依頼くだされば幸いです。

では、また

会社設立の話④「定款の相対的・任意的記載事項」

こんにちは。沖縄の行政書士、酒井です。

俳優の松方弘樹さんが亡くなりましたね。私は高校生くらいの頃、「元気が出るテレビ」をよく見ていたので、訃報を聞いて驚きました。あの方は、芸能人をやっているお子さん2人以外にも子供がいるそうですが、息子さんは他の兄弟に会った事がない人もいるそうです。相続関係が複雑そうですが、果たして松方さんは遺言書を残しているのでしょうか?

話は変わりますが、前回のつづきです。
前回までは絶対的記載事項について書いてきましたが、それ以外の「相対的記載事項」「任意的記載事項」について書きます。

相対的記載事項というのは、定款に記載がなくても直ちに定款が無効とはなりませんが、記載がない以上その事項につき効力が認められないものをいいます。会社法に「定款により別段の定めをすることができる」旨の定めがある事項が相対的記載事項です。また、任意的記載事項というのは、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法その他の強行法規の規定等に違反しないものをいいます。
会社法の原則とは別段の定めをしようと考えたら、相対的記載事項とか任意的記載事項を欠くわけにはいきません。
「無効にはならないんでしょ?ならいいじゃん!」と思うかもしれませんが、多くの会社で定めのを置いている定番の相対的記載事項があり、小規模な会社であればこれらを置かない手はない!というようなものもあります。

以下がその「相対的記載事項」と「任意的記載事項」の例です。

  1. 変態設立事項
  2. 株式の譲渡制限に関する定め
  3. 株券発行の定め
  4. 基準日
  5. 株主総会,取締役会及び監査役会招集通知期間短縮
  6. 取締役会,会計参与,監査役,監査役会,会計監査人及び委員会の設置
  7. 取締役等の任期の伸長
  8. 公告の方法
  9. 事業年度
  10. 株主総会の議長
  11. 議決権の代理行使
  12. 取締役、監査役の員数
  13. 代表取締役、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役等)
  14. 取締役会の招集権者
    など

特に赤字のものは、相対的だ任意的だと言ってる場合ではなく、当事務所で設立する場合は100%置いている事項です。青い文字のものは場合によって記載している事項です。これらについて記述していきます。

①の変態設立事項は、現物出資をする場合に記載するものです。現物出資とはお金ではない財産を出資することを言います。他にも変態設立事項はありますが、現物出資以外はほとんどないと思うので省略します。
現物出資をする場合は、それを定款に書いておかなければなりません。また、その現物出資の価額が500万円を超えるときは公証人の定款認証の後、遅滞なく当該現物出資を調査させるため、裁判所に検査役選任の申立てをしなければならないことになっています。めんどくさそうですよね・・・なぜそんなことをするか?
例えば、ガラクタを持ってきて「これは1000万円だ!」と勝手に評価して資本金の額を1000万円にした、なんてことがまかり通っては、スカスカの株式会社が出来上がってしまいます。登記を見ると、資本金の額1000万となっているのに、実態はスカスカ・・・これは困りますね。そういうことがないように、現物出資はちゃんと定款に記載して、一定額(500万円)を超える評価をした財産は、検査役の調査を受けるなどしなければならないということになっています。現物出資について詳しくはまた別の機会に書きたいと思いますが、個人事業で持っているパソコンや事務機器を数万円で評価して現物出資して設立する会社に移すというような場合なら検査役を選任したりする必要はないので、定款に変態設立事項として記載してください。

次は、②の株式の譲渡制限の定めです。これは定めておいた方がいいです。
この事項は、株式の譲渡に会社の承認を必要とするというもので株式譲渡の自由を制限する定めです。
株式の譲渡は原則自由なのですが、中小企業で株主は身内だけとか、よく知った仲間だけというような会社にとっては、株主の誰かが縁もゆかりもない人に株式を譲渡してしまって、その株式の譲受人がややこしい人だったりすると困ることもあります。そういう不測の株主の出現を防ぐのには、この株式の譲渡制限を設定しておけばいいです。(株式の譲渡禁止ではないので、譲受人に問題がなければ会社は承認すればいいです。)

また、この譲渡制限が付いている株式しか発行していない会社を、非公開会社といいますが、(譲渡制限をつけていない株式を発行している会社は公開会社といいます)中小企業であれば非公開会社にすることで、取締役は株主でなければならない旨を定款で定めることができたり、③の取締役・監査役の任期を定款により最長10年まで伸張できるなどのメリットがあります。

取締役・監査役の任期を10年に延ばせるのは、かなりのメリットです。もし任期を伸ばせないと2年ほどで任期が切れますので、たとえ同一人物が取締役を続けるにしても役員の変更手続をしなければなりません。役員変更は司法書士に依頼すれば経費がかかりますし、自社で手続するとしても登録免許税(1万円~)は絶対にかかります。放置していると、登記懈怠で過料を払わされたりします。それが10年任期が伸びればその間手続は必要ないのですから定めておかない手はありません。
譲渡制限と役員の任期の伸張は定款に記載しておきましょう。

疲れたので、次回につづく

では、また

会社設立の手続③「設立に際して出資される財産・発起人」

どうも!沖縄の行政書士、酒井です。

前回の続きで、株式会社の設立の話、定款の絶対的記載事項についてです。
前回同様、確認のため絶対的記載事項を挙げます。

・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所

今日は、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」「発起人の氏名又は名称及び住所」です。

「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」と随分字数を稼いでいますが、簡単に言えば、どの程度の規模の会社にするか、ということです。ある人が株式会社を設立しようと考え、「さて、貯金は300万円あるけど、そのうち100万円を会社に入れとこう」などと考えて、この額を決めればいいわけです。

出資される現金とはなっていないですよね?
この「出資される財産」というのは、不動産とか車とかパソコンとかでもいいですが、「Aさんの経営のノウハウ」や「2年間無償で働きます」は出資できません。不動産などを出資することを「現物出資」といいます。(これはまた後日書くつもりです)

当事務所にご依頼いただく方の多くは現金出資なので、用意した金額と同じにします。で、大体そのままその額が登記する資本金の額になります。(出資された額の2分の1を超えない額を資本準備金として積み立てることができますが、その場合は出資された額より、資本金の額は小さくなります。)

文言の後半には「又はその最低額」とありますが、これは、会社を設立して事業を行うのに、最低でも○○万円集まらなかったら事業をスタートできない。というような場合、最低限必要な金額を設定しておいて、達成できたら設立、できなかったら設立取りやめというものです。発起人1人か2人で設立するのに、最低限必要な資本が集まるかどうかわからないなんて状況はあまりないです。まあ、気にせず、「用意したお金=設立に際して出資される財産の価額=登記される資本金の額」でいいと思います。

資本金ですが、旧商法時代は、株式会社は1000万円の資本が必要でした。これを最低資本金と言っていましたが、現在はこのような決まりはないので、1円でもいいです。(現物出資と組み合わせれば、現金0円なんてこともありえます。)

次に、「発起人の氏名又は名称及び住所」です。
発起人とは、「会社設立の企画者として、定款に署名または記名押印(電子署名)した者」です。
この定款に署名したかどうかが重要で、設立に関与していなくても名前が載っていたら発起人となります。逆に設立に関与していても、名前を載せていない人は発起人ではないということになります。

で、この発起人、「氏名又は名称」となっています。これは普通の人(氏名)が発起人になれるという意味と、会社・法人(名称)も発起人になれることを意味します。

これで、絶対的記載事項は終わりです。この5つは絶対に定款に書かなければいけませんが、にしても定款ってこれだけ?とお思いのことでしょう。
そうです。この5つだけ書いて、「株式会社○○ 定款」と表紙を書いても定款としては不十分です。

定款には、絶対的記載事項のほかに、「相対的記載事項」や「任意的記載事項」というのもあります。

次回、全部ではないですが、これらについて書く予定です。
ではまた

会社設立の手続②「商号・本店所在地」

どうも!沖縄の行政書士、酒井です。

今日お客さんと雑談中に「名字」の話になりました。
自分は内地出身なので、名字は「酒井」で回りに酒井なんていないのでカブることがないというような話をしていると、お客さんが、
「沖縄にもサカイって名字ありますよ」
ええっ!初耳。で、ネットで調べてみると、内地から来た酒井という人でなく、少ないながらも、もともと沖縄にサカイさんはいるんですね。文字は酒井以外に「佐加伊」と書いたりするようです。まだ会ったことはないです。

前回、定款の絶対的記載事項のうち、目的について書きました。確認のため絶対的記載事項をもう一度挙げておきます。

・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所

今回は、商号本店所在地についてです。

まず、商号ですが、説明するまでもなく、商号とは会社の名前です。株式会社なら、「株式会社○○」「○○株式会社」というように、株式会社と記載しなければなりません。前につけても後ろにつけてもいいです。お目にかかったことはありませんが、中間にあってもいいそうです。「○○○○株式会社□□□」とかです。見たことありますか?

○○や□□の部分は基本的に何でもいいですが、原則、記号は使えません。「株式会社サ★カ★イ!」はダメです。ただし、字句を区切る際の記号としてなら使える場合があります。「株式会社オフィス・サカイ」は大丈夫です。でも、「株式会社・サカイ」はダメです。会社の種類を表す部分を除いて最初に点を置くことはできないとなっています。中点以外にも区切る記号として「&」、「-(ハイフン)」、「,(コンマ)」なども使えます。細かいですね・・・

つぎはローマ字。これは大文字、小文字とも使えます。「株式会社SAKSAI」とか「株式会社Sakai」とかです。以前は使えなかったのですが、今は使えるようになりました。

他には、他の種類の会社と誤解させるような表記もできません。馬鹿馬鹿しいですが、「株式会社合同会社」なんて商号はどっちか分からないですよね?これはダメです。「社団法人サカイ株式会社」とかもダメです。

あと、「銀行」という文言は、銀行以外はつけてはいけないです。銀行は誰でもできるわけじゃなく、内閣総理大臣(だったかな?)にお墨付き(認可)を貰ってはじめて営業できます。他にも、債権管理回収機構(サービサー)とかもダメです。弁護士にしか設立は認められていないからです。「株式会社サカイ銀行」とか、「サカイ債権管理回収機構株式会社」とかつけられません。

まだまだ続きます。

業種と商号のイメージが一致している必要はないということも覚えておいてください。。例えば、「株式会社サカイ衣料」という商号で飲食店や不動産業を営んでも、事業目的さえ入っていれば問題ありません。まあ、普通はそんなことしませんが、考えられるケースとしては、「株式会社サカイ衣料」で、アパレル業をやっていて、飲食業にも新規の事業展開していこう!なんてこともあります。この場合に商号を変える必要はないということです。(普通変えるでしょうけど)

ちょっと話が変わりますが、個人事業主が会社を名乗ってはいけません。罰則もあります。個人事業主の私が名刺に株式会社サカイと書いて配って回ってはいけないのは当然です。

商号については、旧法から随分緩和されたので書くことはあまりないと思ったのですが、書き始めると結構ありますね・・・ダメダメと書き連ねたので、厳しいように思うかもしれませんが、それ以外はフリーです。(細かいことを言えば他にもあるので、言い切っていいのか分かりませんが、上のルールを守って常識的な商号を付ければ大体は大丈夫だと思います。)

旧法では、類似商号といって、「同一市町村において同一営業のために他人が登記したものと判然区別できないときはその商号は登記できない」という決まりがありました。現在、この規定は廃止になったので細かく説明する必要はありませんが、簡単にいうと、沖縄市内に「株式会社A」という不動産業者が存在する場合に、同じ市内で「株式会社A」はもちろん「株式会社a」とか「A株式会社」という商号で不動産業を営む会社を設立しようとすると、商号が同じ、または似ているという理由ではじかれていたというものです。なので、旧法時代は、法務局で設立前に商号がずらっと書かれている商号登記簿を片っ端から見て調査していました。現在でもコンピューター端末が法務局にあり、商号の調査はすることができます。

ただ、現在でも注意すべき場合がひとつあります。
同じ場所同じ商号は登記できません。
「沖縄市胡屋○丁目○番○号」で、「株式会社A」が既にあるとき、同じ「沖縄市胡屋○丁目○番○号」に、「株式会社A」を設立するというのは不可です。どっちがどっちだか分からなくなるからです。ただ、後から設立する方が「合同会社A」や「A株式会社」、「株式会社エイ」であれば設立可能です。
もう少し掘り下げると、「沖縄市胡屋○丁目○番○号101号室」の「株式会社A」が存在するとき、「沖縄市胡屋○丁目○番○号102号室」に「株式会社A」を設立することはできます。紛らわしいですが部屋番号で別の会社と判別できます。しつこく更にもう一つ、「沖縄市胡屋○丁目○番○号」で、「株式会社A」があるとき、「沖縄市胡屋○丁目○番○号102号室」で、「株式会社A」を設立する・・・いけそうですが、ダメです。

だらだらと書きましたが、現在は商号がよそとカブったからといって手続は止まらないということです。
ですが、すぐ近くに同じ商号の会社があるのに敢えて同じ商号をつけることもないと思います。また業種が同じだったりしたら、登記法はよくても、商標法とか不正競争防止法とかでは問題となることもあります。

予定はないですが、将来、私が引越業を始めて「株式会社引越しのサカイ」と商号を付けたら、きっと何かしらのお叱りを受けると思います。

疲れた・・・

本店所在地についてですが、定款に会社の本店所在地を定めます。定め方は、「本店は沖縄県沖縄市に置く」と市町村までで止めておくか、「本店は沖縄県沖縄市胡屋○丁目○番○号に置く」と具体的な地番まで定める方法があります。
「沖縄県沖縄市に置く」の方でも、登記するときまでに、発起人が具体的地番まで決定して登記しなければならないのですが、2つの違いは、本店を移転する場合に出てきます。

定款で具体的地番まで定めてしまうと、同じ市内で本店を移転した場合でも、地番が変更になるので、定款変更の手続が必要になります。定款変更は株主総会の特別決議を経なければならないので、手続がちょっと面倒です。
その点、「沖縄県沖縄市に置く」であれば、同じ市内での移転なら定款は変更しなくていいので、株主総会は不要で取締役だけで変更できます。なので、一応オススメは、「沖縄県沖縄市に置く」と定める方になりますが、株主1人、取締役1人の小規模な株式会社や、家族だけが株主である会社では、どっちでも大差ないです。

思ったより長くなってしまいました・・・
ではまた