株式会社の定款記載事項

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株式会社の定款記載事項



定款の記載事項には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種があります。

絶対的記載事項

定款を作成する際、必ず記載が必要な事項です。この絶対的記載事項を欠く定款は、「無効」になります。たとえ、公証人が誤って認証し、設立登記をしたとしても、有効に株式会社が成立していることにはなりませんので、以下の事項は必ず定款に定めていなければなりません。

  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所


会社の商号

商号とは、会社の名称のことで、定款の絶対的記載事項であり、かつ、登記事項となっています。原則としてどのような商号を用いてもかまわないのですが、会社なら、株式会社合同会社合名会社合資会社の会社形態に合った文字を用いなければなりません。また、会社でない者が会社と誤認するような商号を用いることもできません。旧商法の時代には、「他人が登記した商号は、同市町村内において、同一の営業のためにこれを登記することができない」とされていましたので、商号を決める場合には類似商号がないかどうか綿密な調査が必要でしたが、現行の会社法ではこの規制は廃止され、近隣に同じ商号で同じ営業を行う会社があっても登記することは可能となりました。(ただし、同一の所在場所で同一の商号を登記することはできません。)
また、会社法ではなく、商標法などの他の法令で他社の商標を侵害するような商号を定めることが制限される可能性はありますので、類似商号調査の必要性がまったくなくなったわけではありませんので注意が必要です。

会社の目的

会社の目的は、定款の絶対的記載事項であり、登記事項でもあります。明確性適法性営利性が求められ、従来はこれらに加えて具体性も必要でしたが、会社法施行により要件が緩和され、具体性については不要となりました。
「明確性」とは、目的として記載した文言が、一般人に明瞭に理解されるものかどうかということをいいます。余程意味不明でない限りは問題となることはありません。
「適法性」とは、目的の内容が法令や公序良俗に反していないことをいい、殺人請負、麻薬販売などは当然認められません。また、法令で士業の独占業務とされている業務等も会社法上の目的としては認められません。
「営利性」については、収益を上げられない寄付等の行為だけが唯一の目的となると出資者への利益分配が不可能となるため、そのような目的は認められませんが、一般に営利目的でないとされる事業も営利性があるとされる事業と共にであれば目的にすることができます。会社は定款に定めた目的の範囲内でしか業務を行うことができませんので、設立時に定款を作成する際に、会社が行う業務に適合した目的であるかを調査する必要があります。会社成立当初は目的としていなかった新規事業に参入するような場合には、会社の目的を変更する必要が生じることもあります。将来予想される事業の目的は設立時に入れておいた方が手続費用の点でもよいと思います。
許認可が必要な事業の場合などは、目的の記載によっては許認可が得られないということもありますので、このような場合は目的の記載内容を取得したい許認可に適合するようにしなければなりませんので注意が必要です。

本店所在地

定款には会社の本店を置く場所を記載する必要があります。
記載の仕方には、

  • 「本店を沖縄県○○市に置く」
  • 「本店を沖縄県○○市○○町○丁目○番○号に置く」

というように、市町村まで特定する方法と、地番まで特定する方法とがあります。
おすすめは、市町村の特定まででとどめておく方です。事業を継続していき、最初の本店では手狭になってきたような場合、本店を移転することになりますが、その際に、地番まで定款で具体的に定めていると同じ市内で本店を移転する場合でも「定款変更」をする必要があり、この定款変更は、株主総会の特別決議という厳格な要件が要求されます。
一方、市町村までの特定にとどめておけば、同一市町村内での本店移転に定款変更の必要はなく、取締役(取締役会)の決議で変更できるので手続が煩わしくならずに済むというメリットがあります。
定款に定める本店所在地が最小行政区画までの場合でも登記申請する時点では、○丁目○番○号まで含んだ本店の所在地を定める必要があります。この場合、発起人の過半数に(1人の場合は発起人の決定)より「○丁目○番○号」まで含んだ本店の所在地を決定し、その決定を証する情報を登記申請において提供することになります。

設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

設立に際して出資される財産の価額又はその最低額が会社の資本金になります。
旧商法では、株式会社の設立の最低資本金は1000万円でしたが、現在は資本金の額に制限はありませんので、「1円」でも設立は可能です。また、旧商法では、定款に設立に際して発行する株式の総数を定めることになっていましたが、会社法では、「出資される財産の価額又はその最低額」を定めればよいことになりました。発行する株式数は、定款認証後から設立時までの間に発起人の決定で定めることになります。

発起人の氏名・住所の記載

発起人とは、「定款に発起人として署名した者」をいい、株式会社の設立手続を行う者をいいます。発起人は、必ず最低1株を引き受けなければなりません。発起人の氏名・住所、引受け株式数は定款に必ず記載する必要があります。発起人であるかどうかは形式的に判断するので、実質的に設立を企画し尽力しても、定款に署名又は記名押印(電子署名含む)をしなければ会社法上の発起人ではなく、実質的に設立に関与していなくても、署名又は記名押印した者は発起人となります。発起人の資格については、会社法上制限はありません。自然人だけでなく、法人である会社等も他の会社の発起人となることができ、法人の種類も、公法人、私法人、公益法人、営利法人を問わず発起人となることができます。
ただし、法人は、発起人となることができますが、法人の目的の範囲内においてのみ発起人となることができるので、まったく事業内容が異なる会社の設立について発起人となるには目的の変更が必要となる場合もあります。

相対的記載事項

定款に記載がなくても直ちに定款が無効とはなりませんが、記載がない以上その事項につき効力が認められないものを相対的記載事項といいます。会社法に「定款により別段の定めをすることができる」旨の定めがある事項が相対的記載事項となります。相対的記載事項の記載を欠いた定款は、無効にはなりませんが、設立時にあらかじめ定めておいたほうがよい記載事項が数多くあります。すべてではありませんが、相対的記載事項の主要なものを以下に記述しています。

  1. 変態設立事項
  2. 株式の譲渡制限に関する定め
  3. 株券発行の定め
  4. 基準日
  5. 株主総会,取締役会及び監査役会招集通知期間短縮
  6. 取締役会,会計参与,監査役,監査役会,会計監査人及び委員会の設置
  7. 取締役等の任期の伸長
  8. 取締役,会計参与,監査役,執行役及び会計監査人の責任免除
  9. 社外取締役,会計参与,社外監査役及び会計監査人の責任限定契約
  10. 公告の方法


任意的記載事項

定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法その他の強行法規の規定等に違反しないものを任意的記載事項といいます。任意的記載事項の中にも設立時にあらかじめ定款に定めておいたほうがよい事項もあります。任意的記載事項の例としては次もようなものがあります。

  • 株主名簿の名義書換手続
  • 株券の再発行手続
  • 株主総会の議長
  • 議決権の代理行使
  • 取締役、監査役の員数
  • 代表取締役、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役等)
  • 取締役会の招集権者
    など




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