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相続について
相続とは、亡くなった方の財産・負債や権利・義務などの法律関係がそのまま相続人に承継されることをいい、人が亡くなれば、財産の多い少ないに関わらず、必ず相続が開始します。相続は人が亡くなった瞬間に自動的に起こるものですが、それはあくまで法律論の世界の話で、実際には多くの事務手続を執らなければなりません。
いくつか例をあげてみましょう。まずは、相続人が複数いて、その相続人のうちの一人が相続人の代表として亡くなった方名義の銀行口座を解約しようとした場合です。
亡くなった方に扶養されていた家族などは、生活するためには残された預金が必要です。人が亡くなると、葬儀代、医療費等々支払わなければならないものも少なくありません。相続人の代表として銀行に行き、名義人が亡くなったので解約したいと告げると、銀行員は、このような趣旨のことを言います。
「あなたが解約して預金の払い戻しを受けることに、他の共同相続人全員が同意したことが分かるものを提示してください。」
民法では、相続が開始すれば、共同相続人は法定相続分という一定の割合で亡くなった方の財産を承継することになっています。ならば、「せめて自分の法定相続分の預金を払い戻して欲しい」と銀行窓口で言ったとしても、原則として銀行は口座を凍結し、証明できるものを持ってこない限り引き出しに応じてくれなくなります。銀行としては、その人に払い戻してよいという証拠となる遺産分割協議書(各相続人の印鑑証明書などが必要)、遺言書などの提示を受けるまでは、相続人の中の1人が窓口にやってきても、亡くなった方の預金口座を解約して払い戻して、後々他の相続人から「あの人が勝手に解約してしまった。」「あの人は生前に贈与を受けていたので相続分はない(特別受益)」などといわれることを考えれば易々とは応じることはできないということです。
また、土地や建物も、人が亡くなったからといって、法務局で勝手に名義を書き換えてくれるということはありません。相続人が複数の場合、共同相続人は、相続財産を共有することになり、これを解消するには遺産分割協議で相続人全員で、どの財産を誰が承継するかを話し合い、合意しなければなりません。その上で登記申請しなければ名義は変わらないのです。土地、建物に限らず、自動車のような登録されているものなど、あらゆる場面でこのような手続きが必要だと考えていいでしょう。
さらに、手続きが必要なのは、相続人が財産を承継する場合だけではありません。マイナス財産(負債)がプラス財産より多い場合など、相続をしたくない場合には「私は相続人になりません。」と家庭裁判所で相続放棄の申述をしなければ、亡くなった方と一定の身分関係のある人はいやでも債務を承継してしまうことになります。なにもしないで放っておけば、亡くなった方の負債を法定相続分に応じて支払わなければならなくなります。
このように、現実の世界を法律上の相続の内容に合わせるためには様々な手続が必要です。この手続をすべて終わらせたときに、初めて相続が完了したと言えるのです。